【JEMCO通信】 ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部/広報室 編集

成長戦略 | 技術伝承 | グローバル | 改善改革 | コストダウン | 等 プロジェクト現場から最新情報やお役立ち情報をお届けします。

文責:ジェムコ日本経営 常務取締役 コンサルタント 北井好


 日本の製造業の現場では過去から培われた技術が伝承されないまま空洞化する危険性が散見され始めています。この問題に対してどう取り組んでいけばよいか、第2回目に入ります。

第1回目で技術伝承にブレーキをかける三つの壁についてお話ししました。

 一つ目は「どう技術を正確に引き出すか」の壁、二つ目は「どう技術を正確に表現するか」の壁、三つ目は「どう技術を正確に伝えるか」の壁でした。これらは組織の変更やシステムの構築を検討することで克服されるものではなく、言いかえれば必要条件ではあっても十分条件ではないといえます。基本は、技術をまとめ上げるべく専任された人がこれらの能力を身につける必要があります。そして、これらの能力を誰もが身につけられるようにするには、この能力を理論化・普遍化し管理技術として理解し、訓練により体得する必要があります。

 さて、これからこれら三つの技術についてお話します。


 1.「技術を正確に引き出す」技術
 この技術のポイントは、根拠を徹底的に明らかにしていくこととその根拠が科学的裏付けのある理にかなったものであるかを見抜くこと、であるといえます。モノづくりの現場では、何かの行為や作用を与えることによりモノが変化します。与える行為や作用の目的とその条件の根拠、そしてそれがモノの変化の原理とどう関連するのか、曖昧な部分を残さず徹底して明らかにしていくことが必要になります。中には行為・作用とモノの変化の原理が明確に関連付けられないものも出てきますが、それらは、経験としての知見として別整理しておきます。


 2.「技術を正確に表現する」技術
 この技術のポイントは目的的表現・能動的表現を取ることであります。

 VE( Value Engineering : 価値工学 )の機能的考え方をベースとし、「○○を△△する」という表現を基本として簡潔にまとめていきます。受動的表現・情緒的表現・冗長表現は避け、形容詞は数値化をしていきます。そしてまた、その行為・作用の目的は何か働きは何か、の確認を行い上位・下位の関連の適合性をチェックすることにより、表現として適切な言葉を用いているか評価します。

 3.「技術を正確に伝える」技術
 この技術のポイントは技術として確立されたものとそうではない経験上の知見レベルのものは明確に分けて伝えること、そして伝える媒体と形式をどうするか、にあります。経験上の知見レベルのものを技術として認識し伝承していくのでは、進化は生まれません。地道な理論解明の姿勢が重要であり、そのためには技術と経験上の知見は峻別して伝える必要があります。また、文章よりは写真、写真よりは映像、と盛り込める情報量は多くなります。また行為と作用では表現すべき情報の種類が異なります。対象に応じて媒体と形式を選択する必要があります。


次回は技術をまとめ上げるべく専任された人、すなわち「テクニカルナレッジエンジニア」についてお話します。


文責:ジェムコ日本経営 取締役 小倉明男
今回は「働き方改革」の本質の五回目として「行動の変化:自分で考え、自分で決めて行動する」ということについて取り上げます。
 

◆頭は臆病

 営業で新規のアポイントを取る時、あれこれ考えると電話ができなくなります。相手は忙しいのではないか、怖い人だったらどうしよう、上手く説明できるかな…、考えれば考えるほど、悪い方のイメージが湧いてしまいます。頭の中を真っ白にして電話番号を押してしまえば、「お会いしましょう」なんて簡単にアポイントが取れるケースがあります。

 「頭は臆病だけど、手は臆病じゃない」。頭で考えていると、どうしてもできない理由をいろいろと考えてしまい、どうしてもマイナスな方向へいってしまう。でも実際に手を動かしてみると、意外と簡単にできることが多い。まず手を動かして考えていることができるということを、体を通して知ることが大事なのです。


◆自分で決める

 ある会社で営業成績の悪い人たちを対象に研修をしたことがありました。

話を聞いてみると皆「この地域ではむずかしい」「体調がすぐれなくて」「仲間の協力が得られなくて」など、できない理由ばかりでした。

 自分の可能性をなくしているのは「おれはこんなもの」「これでいいや」「これ以上は無理」というマイナスな自分自身の考え方です。それを破るのは自分で考えて自分で決めて行動するしかない。但し、最初から難しいことをやるよりスモールステップでやれることから取り組むことが大切だということを、研修を通して知って頂きました。

 メンバーが主体的に始めたことは「水曜日の午前中だけある地域を回わってみます」「くすりをちゃんと飲んでみます」「積極的にこちらから仲間に挨拶します」というものでした。ごく簡単な行動でしたが、手ごたえはあったらしく「よい話がありました」「体調がよくなりました」「職場の人が協力してくれます」と、まずみんなの表情が明らかに変わってきたのです。結果は、半年後このメンバーの方々はトップ近くまで成績が上がったのです。
 

◆脳内物質とマネジメント

 上記の例の様に、主体的に行動すると脳にある「報酬神経群」の働きでセロトニンやドーパミンという物質が出て、心地よいご褒美を感じ、次へのチャレンジに本人を駆り立てるのです。スモールステップで最初はどうでもいいようなことですが、主体的に行動して上手く行くことが、心地よさとなって次の行動へと導いていくのです。

特に、若い人たちは“指示待ち”だったり“事なかれ主義”だったりで主体的に行動できないことが多いようです。上司は安易に指示を出したり、自分の価値観や経験を押し付けるのではなく、失敗をしてもよいくらいの気持ちで、自分で考えて自分で決めて行動させるように仕向けることが重要です。そして上手くいったら褒めてあげる。そして、主体的に行動することが習慣化されることで、本人も成長する喜びを感じてチャレンジするようになります。


◆夢に向かって行動を起こす

 行動を起こすのには、夢や志が必要です。そのために、未来を考えることが大切となります。5年後、10年後、20年後、世の中はどう変わっていくのか。その未来で自分は何をしていたいのか。何ができる人間になっていたいのか。このイメージが湧いて、自分の“やりたいこと”が見つかれば、それが行動の大きな原動力となります。

 未来を夢を持って見ながら、その未来に自分がどんな形で携わっていたいかを考え、そのために今から何ができるのか、どんな努力をしていかなければいけないかを考えた上で、スモールステップで行動することが大切です。


これで「働き方改革」本質の五回目ですが、5回を通して読んでいただけると「①夢を持った集団が②主体的に③仲間とスクラムを組みながら④思考を変えて⑤自分で考えて、自分で決めて行動する強い集団になります」ということになります。

次回は本質の六回目「行動の習慣化」というテーマです。

文責:ジェムコ日本経営 常務取締役 コンサルタント 北井好


日本の製造業の現場では過去から培われた技術が伝承されないまま空洞化する危険性が散見され始めています。この問題に対してどう取り組んでいけばよいか、3回に分けて述べてみたいと思います。

 

 大仰に言えば、人間社会がここまで進化したのは知恵と経験の蓄積と伝承、そしてそれを理論化し普遍化していく志向、すなわち技術として共有化したことにあるといえます。

これを日本の製造業の現場に置き換えれば、技術の共有化と伝承が進まなければ日本の製造業に将来はないといえるでしょう。

 にもかかわらず、製造業各社にお邪魔して経営幹部の方とお話すると必ず出るのは「技術伝承が進まない」というお悩みです。

 それではなぜ技術伝承が進まないのか、考えてみたいと思います。

 各社の実態を拝見した時、まず思うのは「過去の経験の蓄積を本当に技術まで昇華させているか」ということです。

 若手が先輩のやり方を見よう見まねで失敗を重ねながら一人前になっていく、ここで止まってしまえば、いわゆる暗黙知の状態のままになってしまいます。

 我々コンサルタントがベテランあるいはマイスターと呼ばれる方にその方たちがお持ちの技術について具体的にヒアリングしたとき、よく聞く答えとして「いろいろあってね」があり、さらにしつこく聞こうとすると怒り出す、という険悪な状態になることもあります。

 これではベテランの方に技術をまとめてくれとお願いしても、何をどうまとめたらよいかわからない、後輩がベテランから聞き出そうとしても一蹴されるということになってしまいます。

 すなわち、「どう技術を正確に引き出すか」が最初の壁になります。

 次に多く見られる実態は、意欲あるベテランの方がせっかく技術ノウハウをまとめたのに「ノウハウが理解できない」「人によって粒度が違う」という現象です。

 ベテランの方は技術に精通した人であり、他の人に何かを正確に伝達する訓練は日頃受けておられないのが実態ではないでしょうか。

 言葉にしても文章にしても映像にしても「どう技術を正確に表現するか」これが第2の壁になります。

 そして第3の壁は「どう技術を正確に伝えるか」ということです。

 伝承すべきノウハウはすべてが技術として昇華できるものではありません。

 トラブルが起こったとき対策を打つわけですが、その根拠が理論化できていれば技術として昇華されていることになりますが、トラブル対応集・やってはいけないこと集でとどまる場合も発生します。技術の進化が激しい場合も同様のことが起こりえます。

 伝承すべきノウハウが技術として確立されたものなのか、あるいは失敗の経験レベルなのか、正しく峻別して伝えていく必要があります。

 このことにより、失敗の経験レベルを技術に昇華していく日々の努力につながっていくわけです。

 

 次回は今回説明した技術伝承にブレーキをかける三つの壁についてもう少し詳しく説明し、どうすればこれを克服できるかについてお話します。

文責:ジェムコ日本経営 取締役 小倉明男
今回は「働き方改革」の本質の四回目として「思考の変化:人生は考え方次第」ということについて取り上げます。
 

◆病気を通じて学んだこと


今から16年前、医者から言われた言葉です。

「即入院ですが、治療方法がありませんので、後は体力勝負です。頑張ってください」と。

突然の発熱と血尿で、病院に行っての診断結果です。

この日から1週間、40度の発熱と血尿が続き、もうダメと弱気になり、過去を振り返っては「あれがいけなかったかな」とか、先を考えては「死ぬんじゃないか」とか、悪いことばかり考え、恐怖のどん底におりました。

その時、実に不思議な体験をしたのです。

夢うつつのなかで、“神の啓示”ではないのですが、脳に直接テロップが流れるかのように、明らかに誰かが語りかけてきたのです。

要約すると

「過去は変えることができないから悔やんでも仕方がない。未来は思い悩んでもどうなるかわからないだから、今なすべきことを熱心になせ 」。

後で調べると「ただ今日まさになすべきことを熱心になせ」というお釈迦様の言葉と重なったのです。

このことが起きてから気持ちも楽になり、病気も快方へと向かい始めました。

この言葉はキリスト教でもイスラム教でもみられ、宗教の基本の様です。こうして先人は、思考を変えることでよりイキイキと生きるすべを教えてくれているのです。


◆ストレスはからだに悪くない

スタンフォード大学教授で健康心理学者のケリー・マクゴニガルさんが最近発表した話がとても興味深いです。

「ストレスはからだに悪い」と言われていますが、最近の研究でそうではないことが証明されたのです。

アンケートとその後の追跡調査でわかったのは、強度のストレスを感じた人は43%死亡率が上がるのですが、これは「ストレスはからだに悪い」と思っている人たちだけで、強度のストレスを感じていても「ストレスはからだに悪い」と考えていなかった人には死亡リスクの上昇は見られず、それどころかこの人たちは、参加者のなかで、もっとも死亡リスクが低かったそうです。

つまり、ストレスがほとんどない人より、強いストレスを感じながらもそれをポジティブに捉えていた人たちのほうが、死亡リスクが低かったということになります。

実際、医学的研究でも、「ストレスはからだに悪い」と考える人たちがストレスで心臓の血管が収縮するのに対し、この人たち(ストレスをポジティブに捉える人たち)は、強いストレス下でも収縮しないそうです。

また、別の研究論文では、「人生の満足度が高い幸せな人々は、ストレス度がすごく高い」という結果もあるとのことで、ストレスを上手く乗り越えたところに満足があるのも確かな様です。


◆脳の暴走と対策

要は、考え方次第で身体に与える影響が違ってくるということです。

悪い例で言うと、何かの病気になり、悪い方へ考えるとどんどん悪いことが起こるのではないか思ってしまいます。つまり、脳が暴走してしまうのです。そして、そこから逃げようとすればするほど恐怖が襲ってきて、結局、病状が悪化したり、うつ病になったりしてしまうのです。

しかし、その意味付けをしてしまっている自分自身(脳の暴走)に気づく力さえあれば、出来事に心が支配されず、そのとらわれからも離れることができるのです。

そうした心の状態にするための四大ツールが“表情、態度、言葉、思考”です。この四つを意識的に明るく前向きにすることで、「脳は、今は平安が訪れ希望に満ちている」と勝手に思うのです。


◆明るく考えれば運命から愛される

わたしたちは、思考次第で生き方が変わってしまいます。

何か悪い出来事が起きても「大変だ」とおろおろするより、「自分の成長のチャンスだ」と思えるかが大切です。

仕事においても、「奴隷のようにやらされている」ではなく、そこに意味を見出し、主体的行動を起こした方がからだにも良いし、仕事も面白くなるはずです。

善きことを思い、善きことをすれば、良い結果が生まれる。 

物事を暗く考える人間は暗い運命を引き寄せる。天を信じて明るく考えれば運命からも愛され、幸せな人生を築くことができるのです。


今回で「働き方改革」の本質の第四回目ですが、4回を通して読んでいただけると「①夢を持った集団が ②主体的に ③仲間とスクラムを組みながら ④思考を変えて強い集団になります」ということになります。


次回は、本質の五回目「行動の変化」というテーマです。

文責:ジェムコ日本経営 常務理事 グローバル事業担当コンサルタント 高橋 功吉

  前前回は、海外拠点の経営幹部として、赴任前に最低限、身に付けておくべき事項の一つ目として、経営の基本についての理解の重要性を述べた。

今回は、各国で仕事をさせていただくという立場から、各国の事情や文化・宗教等についての事前の理解の大切さについて述べたい。


◆その国の常識を知らないと大変な事態になることは多い

 以前、このコラムの中の「人の現地化」の中で、タイのある拠点で発生した事例を紹介した。それは、日本人出向者が、人事異動に関する説明をするのに、王様を引用して説明したのだが、説明の仕方の悪さもあり、これが不敬発言だとして、従業員から残業拒否、さらには、ストライキに入るという事態にまで発展。事業継続のために、最終、その出向者を帰任させることで収拾せざるをえなくなったという事例だ。タイでは国民の誰もが王様を尊敬している。その当たり前の感覚が不足していると、このような大変な事態を招いてしまうということだ。

また、インドをはじめとした新興国では、売掛金回収問題で苦労された企業も多い。販売したら支払ってくれるというのは日本の常識だが、国によっては、いかに支払いを先延ばしするか、支払わずにすませるかを考えるのが当たり前という国もある。その常識がわかっていないと、売掛金の回収ができず、資金繰りが回らないという事態に追い込まれてしまうということも発生する。

それぞれの国には、それぞれの文化や歴史があり、また、宗教も違う。日本では、無宗教の人も多く、宗教を軽んじる人も多いが、それぞれの国で根付いた宗教を理解せずに、それを無視した言動をすると事業ができなくなるという事態に陥ることは多い。

 その国で生活する上でも日本の常識は通用しないことが多い。チップを支払う習慣の無い日本人は、その国の人からは非常識な人とみられる。また、生活する上で、日本は拳銃の所持そのものが禁止されているが、自分の安全を守るという視点では拳銃を持つのは当たり前という国もある。また、食事をすれば目上の人が支払うのが当たり前で、割り勘というようなことを言いだすと驚かれるケースもある。宗教で禁止されている食べ物や期間があったりもする。飲酒もそうだ。それぞれの国でものの考え方も違うということであり、その国で暮らすには、その国の常識を理解して生活することが必要だ。

ところで、ここまで、各国で文化や宗教が異なるにもかかわらず、事前にこれらの教育がされていないというケースが意外に多い。仕事の引き継ぎは行なわれるが、このような、その国ならではの注意すべき事情が引き継がれていないことも多い。

 そういう意味では、出向者人材の育成には、赴任候補先が決まったら、その国の文化や習慣、宗教をはじめとした、その国の常識を勉強できる機会を作ることが大切だ。これらの勉強方法だが、一つには、日本在外企業協会はじめ、各国の事情や、問題発生事例等を記載した本や資料も多く出されているので、これらを活用して勉強すると共に、可能であれば、日本の文化や考え方をよく知っている外国人の方に、その国で日本人が注意すべき点を教えてもらう場を作ることは有効だ。ある企業では、日系企業での勤務経験のある留学生に来てもらい、赴任国の文化や考え方、また、日本人の考え方との相違点を説明してもらい、日本人が注意すべき点を赴任前研修の中で行なわれている。実際、受講者からは多くの質問が出されるが、事前に、このような事情が理解できるだけで、赴任してから、ローカルの皆さんとの接し方や信頼関係の構築に、大きな効果があると共に、赴任にあたっての不安解消にも役立っている。もっとも、赴任先が多くの国にわたると、そのような場を設けることが難しいというケースもあるが、実は、留学生のネットワーク等を活用することで、結構、多くの国の方にお国事情を聞く機会を作ることは可能である。

 また、生活という視点では、以前、その国に赴任した経験のある家族から生活上注意すべき点を聞くというのも有効だ。仕事の話しだけではなく、生活上の情報も入手することで、赴任者は安心して赴任することができ、事前の心構えもできることになる。また、それらの情報をまとめるだけで、その国で生活する上で注意すべきことや、日本から持参する方がよいもの等をまとめた情報ブックが作成できる。各企業では、これらの情報を集めて一元的に管理することは大変有効なことだ。家族帯同で赴任する場合には、これらの情報を家族にも伝えることで家族の不安を少しでも取り除くことができる。

 グローバル化が加速する中で、これらの情報を積み上げていくだけでも貴重なノウハウにすることができるということだ。


◆その国で仕事をさせていただくという姿勢が大切

 ところで、筆者が海外出向される方を対象とした研修でいつも申し上げていることであるが、一番大切なことは、「その国で仕事をさせていただく」という姿勢を忘れないということだ。実は、海外拠点を訪問させていただくと、ローカルの皆さんをバカにしたような発言をされる方がある。「彼らでは、言ってもわかるはずはない」というような発言だ。その国で拠点を設立して仕事をさせていただく以上、ローカルの皆さんの力がなければ事業は成り立たない。また、その国で事業をさせていただく以上、何かしら、その国に貢献できないようでは、進出する価値はない。その国で、その場所を借りて、また、その国の方々の力を借りて事業をさせていただいているということであり、その基本姿勢を忘れては具合が悪いということだ。

その国を愛し、発展に向けてどうお役立ちできるかを考えることが、その国に受け入れてもらうことができる基本である。常に、この姿勢を忘れなければ、わからないことはローカルメンバーに教えてもらうという姿勢ができ、色々と教えてもらうことで信頼関係と共に、その国の常識を踏まえた行動もできることになる。

現地に赴任すると、どうしても日本人は上位の職につく場合が大半だ。しかし、現地で仕事をさせていただく以上、常に、ローカルの方に教えてもらうという姿勢を忘れてはならないということだ。この姿勢を持ち続ける限り、大きな問題に陥るということは避けられる可能性が高い。出向いただく方には、是非、この姿勢だけは徹底していただきたい。


 日本の市場がシュリンクする中で、グローバル事業の拡大が成長戦略の鍵を握る以上、それを成功に導く鍵は、出向者人材の育成にかかっている。海外展開の計画の裏側には、出向者人材の育成計画が表裏一体として計画されていなければならないということだ。グローバルで事業を成功させるために、各社が適切な出向者人材の育成に取り組まれることを期待したい。

 ちなみに、ジェムコ日本経営では、海外出向される方々を対象とした教育支援も多く実施させていただいていることを申し添えておく。


2013年8月から、この「グローバル展開の現場から」のコラムを担当させていただきましたが、このコラムの執筆を担当させていただくのは、今回を最後とさせていただきます。長期間に渡ってご愛読いただきましたことに感謝申し上げます。グローバル展開無くして事業の発展はできない環境です。皆様のさらなるグローバルでのご発展とご活躍を心よりお祈りしています。

高橋功吉


文責:ジェムコ日本経営 ジェムコ日本経営 取締役 小倉明男
今回は「働き方改革」の本質の3つめのテーマ「関係性の向上:思い込みの罠」ということについて取り上げてみます。
 

◆妙齢のご婦人達の会話から

よく電車内やファミレスなどで出くわすオバさん3~4人の会話です。

「ねえ、聞いてよ~。A子さんたら昨日B子さんにこんなこと言っていたのよ」

「私も聞いたわ、信じられないわよね~」

「私なんかA子さんにこんなこと言われたのよ~」

「え~!ひどいわね…」

というものです。

話を聞いていると、A子さんはとんでもない人のようにも思えてくるのですが、だとすると、会話の当事者3~4人と、1人のとんでもない人がいる構図になります。

果たして本当にそうなのでしょうか。もしそこにA子さんがいたら、何と弁明するでしょうか。

人は、本当はこうしたいと思う理想の姿があるのですが、自分の努力不足や怠惰が原因でそれがやれなかった(やらなかった)時、自分を正当化するために、他のことの理由や他の人のせいにする傾向が強いらしいです。

先程の女性たちの会話から想像すると、たとえA子さんは正論を話していたとしても、何らかの理由でそれができない女性たちが、A子さんの性格や言動のせいにして、なおかつ同調者(A子さんは悪者)を増やしている、というそんなシーンなのかもしれません。 
 

◆事実と真実

世の中には事実は一つしかありませんが、真実(事実を受け止める人の価値観と感情を含めたもの)は人の数だけあります。

争いは真実と真実のぶつかりあいです。どちらも自分側の立場では「絶対正しい」のです。世の中の争い事はすべてこれだと言ってもよいでしょう。

それを「お前は間違っている」「あなたこそ違う」と言い合えば言い合うほど、感情的になり、「あいつはダメ」「あの人はひどい人」などのレッテルを張って、もう話を聞こうともしなくなります。つまりこれは“思い込み”です。
 

◆自分の世界を狭める“思い込み”

こうして人は“思い込み”の世界で自分の世界を狭めていき、「俺はツイテいない」「環境が悪かった」「上司・会社・友達に恵まれなかった」などと、自分のことはさておき、外部環境のせい、悪さにしてしまいがちです。こういう人は仕事のパフォーマンスも上がりません。
 

◆何を言っているかより、何をやっている人かが大切

仕事ができる人を見ていると、コミュニケーションがよく、不平不満は言わず、人の悪口は言わない、約束を守る、嘘はつかない、進んで嫌な役回りをするなどの共通点がみられます。そうでない人と何が違うのでしょうか。

仕事ができる人は、他の人や全体の状況を偏ることなくはっきりと見ています。他の人をあるがままに、自分と同じ人間、同じ様なニーズや望みを持った人として、まっすぐに見ています。何よりも、自分でこうしたことを実践していることが大切です。

 その人が何を言っているかではなく、何をしている人かが大切なのです。こういう人のところには、一緒に働きたいと人が集まり、おのずとうまくことが運びます。


◆かけがえのない仲間の長所を見る

このように、自分の価値観で人を見るのではなく、かけがえのない一人の人間として見れば、必ず長所や個性に気付けるはずです。

ある大手印刷会社で、営業部門のミーティング研修を実施した時の最終報告会で、各メンバーからの感想発表を聞いたのですが、同じ営業部門の部長と新人のコメントが次の様なものでした。

部長「ミーティング研修前は、A君のことを全くやる気のないチャラチャラしたダメ人間だと思っていました。今回のミーティングを通して彼と話をして、こんなに優秀でポジティブな人間がうちの部にいたと初めて気がつきました」(実際の言い回しはもう少し配慮されていますが、このような意味合いでした)


A君「ミーティング研修前はいつも怒られていてばかりで、部長の話がさっぱり分からずどうしていいか悩んでいましたが、このミーティング研修を通して、部長が言われていることの意味や、私に期待されていることがはっきりとわかりました」と。


研修により人の見かたや価値観が非常に劇的に変わった事例ですが、皆さんの身の回りにもあることではないでしょうか。つまらない“思い込み”でかけがえのない仲間を「ダメなヤツ」「つまらないヤツ」と決めつけていませんか。


◆組織における信頼関係が業績を上げる

とはいえ“思い込み”に気付くことは至難の業です。それは、自分の思考の枠組みであり、そこを自ら越えたり壊したりできないのです。例えば居心地のよい自分の部屋の壁を壊したり、屋根を取っ払う様なことであり、自らやることは簡単なことではありません。ではどうすればよいのでしょうか。

まずは、異質なものを受け入れてみることからではないでしょうか。世の中では「ダイバシティー」と騒がれていますが、これは何も外国人や女性を受け入れようということだけではなく「多様性の受容」ということです。異質なものを取り入れて組織生産性を高めようというものです。まずは先入観なしでいろいろな人の話を聞いてみませんか。


仕事を効率的に進めるためには「組織における信頼関係」といったインフラが不可欠です。お互いがそれぞれの価値観を知り、信頼し合っていることで良い連携がうまれ、お互いのミスを補い合い、そこにそれぞれの経験とスキルも加わって、成功の度合いを大きくすることができます。

企業業績を上げるために経営戦略や組織改革が論議されがちですが、本質的な部分としては、この信頼関係が構築されているかどうかが大切な部分だと思います。人間同士の関係性が深まることで連携が深まり、発想が広がり、モチベーションが高くなります。当然モチベーションの高い連携の取れた組織は、結果として業績が良くなるはずです。


今回のコラム「働き方改革」をシリーズ通して読んでいただけると
1.夢を持った集団が 2.主体的に 3.仲間とスクラムを組みながら働いて強い集団になります
ということになります。

次回は「思考の変化」というテーマです。

 

文責:ジェムコ日本経営 ジェムコ日本経営 取締役 小倉明男

前回、「働き方改革」の本質の一回目として「主体的に働く」ということについて取り上ました。今回は、二回目として「未来を考え、夢をもつ」ということを考えてみます。 

◆夢がない、いまの日本の職場

 かつて、高度成長時代のサラリーマンは、一生懸命働いて給料を上げ、テレビを買い、洗濯機やクーラーを買い、余裕ができたら車もほしい、最後は家が欲しいと、現実的ながらも夢をもって仕事に取り組んできました。そのためには、多少の理不尽なことは我慢していました。これも、そうした夢があったから、同じ夢を持つ仲間がいたから我慢できたのです。

 いまの20代、30代のサラリーマンに聞くと「特に欲しいものはない」「夢なんて考えたこともないですよ」と返事が返ってきます。以前日経新聞の新入社員に対するアンケートでは「できたら働きたくない」と答えた人が29%、働く目的で最も多かったのが「安定した収入のため」で69%という結果だったそうです。仕事を生活の為と割り切る傾向が鮮明になっているとのことです。

 一方、会社のマネジメントも多くは数字だけの目標管理制度で、「あなたはこの数字を達成しなさい」と、プロセスはさておき結果だけの管理をしていることが多いようです。これではマネジメントではなく、放置になってしまっていないでしょうか。

 いままでの管理型経営は従業員に、「あなたを信用していませんよ」というメッセージを絶えず発し続けているようなものです。そして「夢など持たずに間違いなく仕事をしろ」と言っていように思えます。だから言われたことはやるがチャレンジしない社員“ことなかれ社員”が増えているのではないでしょか。

◆思えば叶う

 世の中には奇跡と言われることが沢山あります。昨年の南アフリカを倒した日本ラグビーがその典型です。それを実現した人はみな、長らく夢として持ち、あきらめることなくできると信じてきた人たちです。思っていれば何らかのチャンスは必ず来る。実現へ向けてのアイディアが湧く。誰かがヒントをくれます。常に思っているからそれにつながるのであり、思っていなければ人もアイディアもすべて素通りしてしまいます。

 「それは無理」「やっても無駄」は、すべての可能性を潰してしまう最悪の言葉です。人間の持つ、神様から授けられた個性と能力を発揮するためにはまずは「できる」と思うことです。

◆失敗は成功のもと

 エジソンの「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ」という言葉が物語るように、いまの人たちは、上手くいかない方法をあまりにもやっていないのではないでしょうか。情報が氾濫する現代は、事前に情報を得て失敗しない方法、失敗しない基準をつくり出しているので、なぜ上手くいっているかさえも分からなくなっています。

 我々がつくってきた社会は、失敗しない仕組みで成り立っているともいえます。それは、先輩たちが苦しみ、思考錯誤を繰り返して沢山失敗して仕組みができたからです。つまり仕組みはできたが、物事の基準やルールをつくるための失敗を経験させていない人たちをつくってしまっているのです。ボタンを押せば製品ができる。夢も持たず、間違いのない仕事をする。つまり、“ことなかれ社員”をつくってしまったのは、失敗を恐れる私たちなのです。

◆夢は未来にある

 未来を考えるのは「自分のやりたいことを見つけ」、その時代が来た時に“できるようになっている”ことです。だからワクワクするし、ない時間を創って努力が続くのです。最近、参加している田中栄氏が主宰する「未来予測」コミュニティーで、未来を語り、未来をつくる人たちと行動していますが、そこでは誰も“無理”とは思っていません。まだ実現しないけど、必ずできると思っています。良い思いで行動すれば良いことがどんどん起こり、必要な人との出会いがあり、夢の実現性が見えてきます。このコミュニティーでも、夢を持つ人の周りに人が集まり、必要な人が現れ、アイディアが湧き一歩ずつ夢が実現していくプロセスを見ます。まさに奇跡が起こるのです。

◆夢を語ることから始めませんか

 いま会社にとって必要なことは、社員一人一人の個性と可能性を認め、夢を語る風土文化をつくることではないでしょうか。マズローの6段階の生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求はすでに満たされており、これからは認定欲求、自己実現欲求、自己超越欲求が強い時代になっているのです。

 自分のいる会社を通じて自分の個性と可能性を発揮するために未来に向けてどんな努力をするのか、その未来が来た時の成長した自分の姿がどんな姿なのかワクワクしながらイメージする。そして、その実現のために会社や仲間がバックアップする。夢を語る人たちは元気で明るくコミュニケーションが活発になります。そうした風土文化づくりが必要なのではないでしょうか。

“自分の人生の可能性を最大に発揮するための働き方改革”を、いまから始めてみませんか。


次回は「関係性の向上:思い込みの罠」について取り上げます。


 

文責:ジェムコ日本経営 広報室 マーケティング担当 安村亜紀

◆今月のランキング

2016/1/28次点のYahooニュース国内テーマ上位ランキングは1位ベッキー 2位サッカー五輪代表 3位SMAPとなっている。(人気の国内テーマをランキング形式でお届け。Yahoo!ニュースでは、新聞・通信社が配信するニュースのほか、映像、雑誌や個人の書き手が執筆する記事などを掲載しています。とのこと)
YahooNEWSテーマランキング

SMAP解散危機騒動について、経済界でも名だたるやり手紳士淑女のみなさまとFacebook上で、議論になっている。それが単なるミーハーではなく、自己反省も含めて実に考えさせられる内容だ。


「SMAPSMAP」でのメンバー五人の謝罪会見は、「ジャニーさんに謝る機会を頂き...」「ご心配かけてごめんなさい」つまり解散はしませんとのこと。明らかに事務所にやらされている雰囲気が伝わる。解散回避には安堵したが、モヤモヤする内容だった。同時に、「仕事」とは何か?改めて考える機会にもなった。

マネージャI女史の功績があって国民的アイドルSMAPが存在することは間違いがない。ジャニーズ事務所の業績が振るわなかったころ、SMAPの隆盛で業容が拡大したことも間違いがない。
しかし、I女史は勤め人として業務遂行をしていた(オペレーション)。一方、メリー/ジュリーさんは家業を商っている。商いだ。財産も人生もかかっている。I女史は、ジャニーズという軒先で動いていたからこその業績である。オペレーションと商いは違う。ところで、この騒動の発端は、以前から囁かれていた「ジャニーズには派閥があるのでは?」という問いにメリー副社長が答えた雑誌取材にある。「派閥など無いがもしあるなら、それは娘と対立するということ。娘を取るのは当たり前。対立するならI女史はSMAPを連れて出てけ!」
というアレだ。メリーさんからしたら、家業なので当然だと思う。I女史からすれば公然と出ていけなんて言われたわけで、そりゃ誰でも辞めてやる!となる。

メリーさんが家業を守ろうとするのは当然であるものの、公にI女史出ていけ!なんてやるのは感情的で経営者としては駄目だと思う。「心配をかけたファンに謝罪を!」までは良かったが、夢を売るアイドルビジネス
をしていて、裏を見せてしまったのはバツ。商いの失敗。

一族のやり方に我慢ならずSMAP連れて独立しようとしたI女史は、あくまでサラリーマンなのでわきまえていなかったということ。これも駄目だ。

この一連事態、一般社会でもよく見かける。他山の石として眺めるだけではなく、教訓としてとらえるべきだと思わされた。
2016年JEMCOのスローガンは、「当事者意識」。
SMAP解散騒動のことを思うに、お客様の商いに関与する当事者として、お客様の商いを改善改革するオペレーションを担う立場。絶妙なバランスで仕事をしたいと強く感じた次第である。

(ランキングとSMAPネタの関連付けが若干無理やりでスイマセン。)

文責:ジェムコ日本経営 常務理事 グローバル事業担当コンサルタント 高橋 功吉

  2016年がスタートした。今回は、連載中の内容は次回にして、2016年のグローバルでの事業展開課題の一端について述べることにする。

年末になると、いつも注目している調査結果が発表される。一つは、四半期単位で日本経済新聞社が行なっている社長100人アンケート*1だ。毎年年末に発表される内容は、来年について主要な企業のトップがどう考えているかの調査結果が発表される。来年に向けての事業課題や投資意向等を把握するにはよい調査資料だ。また、もう一つ、注目しているのは、毎年12月にジェトロから発表される「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」*2だ。これは、アジア・オセアニア地区に進出している5000社近い企業の回答をまとめたもので、主要国の状況や課題を把握するには、大変よい調査資料である。



◆中国拠点の方向付け

 ところで、昨年末に発表されたこれらの調査結果を見ると、社長100人アンケートでは、国内景気については1年後ということでは、①よくなっている②改善の兆しが出ているとの回答を合計すると77.9%と、大半の経営者がよい方向に向かうとしている。しかし、そのような中で、やはり懸念事項としては、中国経済の動向と言える。中国の景気の現状をどのように認識しているかという質問に対しては、④緩やかながら悪化している⑤急速に悪化しているを合計すると、53.4%の経営者が悪化してきていると認識。さらに中国経済減速による経営影響としては、④ややマイナスと⑤マイナスを合計すると67.6%を占めており、影響内容としては、中国での販売減少、中国への輸出の減少のみならず、中国の工場の生産縮小を上げている企業も26.5%にのぼる。ところで、ジェトロが昨年12月22日に発表した「2015年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」をみると、回答した中国進出企業874社では、過去1年での従業員数の変化では、1/3近くの32.8%の企業で現地従業員数は減少と回答している。増加したところが22.9%あるものの、これらを見ると、明らかに、中国での生産規模の縮小、拠点の縮小が加速していると推察される。

この背景には、中国経済の減速ということだけではなく、人件費の高騰が実は大きな要因となっている。上海の最低賃金を例にとると、2010年には1120元だったものが、2015年には2020元と、この5年で倍近くになった。ジェトロの同調査でも、経営上の問題のトップは従業員の賃金上昇となっているが、アジア・オセアニアのすべての国の中で、賃金上昇を経営問題としてあげた企業は中国の84.3%がトップとなっている。実際、中国の日系企業では人件費の高騰と共に年々利益が大幅に悪化。生産品目の見直し、さらには、事業構造の変革に迫られている企業は多い。特に、製造業の中でも、繊維や食品といった労働集約型の企業は、赤字に陥っているところが多く、ジェトロの同調査の中国編を見ると、2015年度の見通しとしては、繊維では38.5%、また、食料品では38.1%の企業が赤字の見通しとなっている。

また、中国を輸出拠点にしていた企業は、その役割をASEAN等にシフトするなど、グローバルでの供給拠点戦略の見直しを迫られた企業は多く、労働集約型の生産品目をやめ、中国市場向けの高付加価値商品にシフトするなど、事業戦略そのものの見直しが加速している。


◆ASEANでは、投資したい国はインドネシア、タイだが・・・

 さて、中国に対し、東南アジアへの投資拡大意向は強い。社長100人アンケートの中で、「東南アジアでの事業規模を中長期的にどうされますか」という質問に対しては、拡大するが51.0%、やや拡大するが26.3%と、77%もの企業が拡大を目論んでいる。この背景には、中国市場の動向や中国での人件費高騰問題もあるが、昨年末に発足したAEC(ASEAN経済共同体)の発足も一つのビジネスチャンスと捉えている企業も多い。ASEAN諸国の中で重点的に投資したい国としては、1位がインドネシアの35.9%。2位がタイの30.3%、3位がベトナムの22.1%となっており、この3国が突出している。確かに、ASEAN最大の人口を抱えるのはインドネシアであり、市場という意味でも当然と言える。また、人件費では、まだベトナムは他国と比較すると安いのも事実だ。しかし、これらの国でも、大きな問題は、中国同様の賃金上昇である。特に、インドネシアやベトナムは人件費の上昇が激しい。例えばベトナムでは、ハノイやホーチミンといった地域1で、2011年に155万ドンだった最低賃金が2015年には310万ドンと4年でちょうど倍になった。インドネシアも、地区によって異なるが、例えば、ブカシ県であれば、2011年には1286千ルピアだったものが、2015年には2925千ルピアと、この4年間で、2.3倍になっている。実際、ジェトロの同調査結果を見ると、経営上の問題点としての賃金上昇については、インドネシアが中国に続いて80.5%、また、ベトナムが3位で77.9%となっており、実は、中国と同様の課題を抱えているということだ。

すなわち、現在は、人件費率が15%程度の企業でも、4年も経つと、人件費率は30%を超えることになってしまうということであり、早晩、今のままでは、中国と同様、事業が立ち行かなくなる可能性が高いということだ。

◆◆日本のものづくりが試される時

 さて、2016年のグローバル事業展開ということでは、これらの環境変化からも明らかなように、さらなる製造拠点戦略の見直しが必要になってくるということであり、いかにスピードを持って対応するかが鍵になる。対応が遅れると、それだけで赤字に転落すると共に、大幅な赤字拡大という事態を招くことになる。また、ミャンマーをはじめ、さらに人件費の安い地域への展開やシフトということもあるが、併せて重要なことは、いよいよ、日本のものづくりの真髄が試されるタイミングになったのではないかということだ。すなわち、新たな工法開発を含め、日本のお家芸だったものづくりの進化が、グローバルでどれだけ展開できるかという時期になったということではないだろうか。

すでに、中国などでの工作機や生産設備の展示会では、おもちゃのようなものも多いが、ロボットの展示が増えている。ロボット化、自動化が必須になっているということが背景ということなのだが、日本のものづくりは、単にロボット化だけではなく、そこに、新たな工法を織り込むことで、どうやって作ったのだろうかと言わせる「ものづくり技術」があった。品物を見ればこういうものだとわかるが、どうやって作るのかわからないようなものであると簡単には真似はできない。このことは、以前、コラムの中でも記載したことがあるが、実は、ものづくりのブラックボックス化は日本のお家芸の一つだったはずだ。

どの拠点も、人件費は高騰している。それを凌駕できるものづくりが、これからの日本がグローバルで生き残るためには重要になるが、2016年のグローバル展開の中には、ものづくりをどう進化させるのかというシナリオも大切になるのではないだろうか。新たな工法開発を含めて、日本のものづくりが試される時が来たと言えるのではないだろうか。



*1上記文面の中の日本経済新聞社の社長100人アンケートの調査結果は、2015年12月21日付けの日経産業新聞に掲載されたものから引用。

*2ジェトロの「2015年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」及び「同中国編」は、下記サイトより引用。

https://www.jetro.go.jp/world/reports/2015/01/4be53510035c0688.html

https://www.jetro.go.jp/world/reports/2015/01/0b534b5d88fcc897.html



文責:ジェムコ日本経営 常務理事 グローバル事業担当コンサルタント 高橋 功吉

 前回は、海外拠点での経営問題を見ると、人災と言ってもおかしくないのではという事項が多く、そういう意味では、出向者人材の育成が極めて重要なのだが、現実を見ると計画的な育成には難しさがあることを述べた。また、出向候補者の選定としては、単に能力だけで判断するのではなく、異文化で仕事をする資質があるか否かが重要であることを述べた。

 今回は、資質のある人材を選定した上で、海外拠点の経営幹部として、赴任前に最低限、身に付けておくべき事項について述べることにする。


◆赴任前研修が真に有効なものになっているか

 赴任前研修や出向候補者研修を行なわれている企業は多い。

実際、海外での仕事に順応できる資質のある人でも、不安事項は多く、それは、異文化の国で仕事をすることへの不安だけではなく、仕事の範囲が大幅に広がることから、未経験の仕事に対する不安と共に、海外の場合は、教えてもらえる人が近くにいないということも背景にある。それだけに、赴任前の研修は極めて重要と言える。しかし、研修内容を見せていただくと、これでよいのかというものが意外に多い。失礼な言い方だが、研修メニューそのものが、経営を担った経験のない人や、海外出向したこともない人が企画したのではないかという内容になっていることが多いからだ。

 それでは、海外での経営を担う立場として、最低でも理解しておく必要のある事項としては、どんなことがあるだろうか。一つには、経営を担う立場である以上、経営の基本についての理解である。これが身に付いていなくては、適切な経営判断や経営の舵取りは難しい。ベースはキャッシュフローへの理解と、具体的な推進方法の理解が必須だ。また、成り行き経営にしないためには、経営計画の策定や日常の経営推進管理といった事項も理解しておく必要がある。さらに、海外では日本の常識は非常識ということも多い。その国で仕事をさせていただくという姿勢で仕事をすることが大切ということだが、海外での常識や海外でよくある問題を事前に理解していないと落とし穴にはまることもある。ローカルの皆さんとの接し方も含めて、先ずは、これら最低でも必要となる知識について、短期間で修得できるカリキュラムは、是非、用意しておきたい。


◆経営の基本としてのキャッシュフローへの理解

 今回は、先ず、それらの中から経営の基本への理解ということについて述べる。

海外出向すると、大抵、役職は1~2階級上になると共に、経営全般を担う立場になることが大半だ。さらに、海外拠点は日本の中の一工場ではなく、独立した法人ということになる。税務調査が入ることもあれば、労使協議等も独立した会社として対応が必要になる。

 今までは、本社のメンバーがやってくれていたというようなことも、自分の責任で行なうことが必要になる。

例えば、資金繰りだ。資金繰りなどは、本社の財務部門や経理部門がやってくれていたことで、今までは、そんなことは知る必要がなかったかもしれない。実際、自分の財布にはいくらお金が入っているかは知っていても、会社にいくらお金があるかは知る必要もなかったという人は多い。しかし、独立した会社ということになると、そうはいかない。資金ショートすれば、倒産ということになりかねない。従業員への給与の支払い、調達先への支払い等で苦労したことなどなかった人が、「資金不足で給与支払いができませんがどうしましょうか」とローカルの経理責任者に言われて、慌てふためいたというようなこともありうるからだ。

 そういう意味では、先ずは、経営の基本となる「キャッシュフロー」についての理解は必須と言える。どうするとお金が増やせるか、どうするとお金が減るか、誰もがわかっていそうな当たり前のことなのだが、意外に、この基本が理解されておらず苦労されている例は多い。もともと経営は、株主や金融機関等から調達したお金を使って、いかにキャッシュを生み出していくかということであり、そこで生み出したお金を使ってさらなる成長発展に向けて投資をし、さらに新たなお金を生み出すというのが、事業を存続発展させていく基本のサイクルになる。従って、ムダなお金の使い方をせず、キャッシュを生み出すには何に取り組む必要があるかという基本がわかっていないと、話しにならないということだ。ちなみに、誰もムダなお金の使い方などしているとは思っていない。しかし、例えば、売掛金であれば相手に無償でお金を貸しているのと同じであり、また、在庫はお金が物になって寝ている状態なので、借金をして調達したお金が売掛金や在庫になっているということは、それだけで金利を支払っているという感覚が持てることが大切なのだ。

 すなわち、どこからお金を調達し、そのお金を事業推進のための資産にどう換えたのかを示したものがB/Sであるが、先ずは、B/Sの中身がわからなくては、有効なお金の使い方にできているかもわからないことになる。

 どの企業でも利益については、うるさく言われており、大抵の人が理解している。しかし、B/Sやキャッシュフロー計算書などは見たことも無いという人が多い。これでは、経営を担うことは難しい。最低でも、資金の組立や利益の組立ができなければ、経営計画そのものの策定もできないし、また、日常の経営管理も難しい。実際、未回収の売掛金が多いにもかかわらず、利益しか見ておらず、利益が出ているにもかかわらず資金ショートに陥ったという事例もある。海外では、支払いを遅らせるのは当たり前という国は多く、日本の感覚で、売ったらお金を支払ってくれるものという感覚でいると、大変な事態になることがあるが、日頃からB/Sやキャッシュフロー計算書、資金繰り表から管理しておくべき事項がわかっていないと、このような事態にもなりかねない。

 先ずは、経営の基本としてのキャッシュフローについては、徹底して事前に勉強して赴任いただきたいということだ。

文責:ジェムコ日本経営 ジェムコ日本経営 取締役 小倉明男


◆「働き方改革」の本質‐第一回 「主体的に働く」とは
 前回、本コラムで「人と組織の活性化‐働き方改革」について紹介しました。そこで、今回から「働き方改革」の詳細について取り上げていきます。第一回は「主体的に働く」ということについて考えてみます。


◆人の持つ可能性をつぶすもの

高度成長時代を生き抜いてきた我々は、後世に何を残してきたのでしょうか。利益、コスト、効率と血のにじむ努力をしてきたのに、夢のない、やりがいのない社会にしてしまったのでしょうか。

最近、各社からご相談されるのは

「事なかれ社員が増えて困っている。言われたことはちゃんとやるのだけれど、それ以外はやらない」

「新しい事や面倒なことにはチャレンジしない人たちが増えてしまった。これで強い会社になるはずがない、何とかよい方法はないか…」

といったことが非常に増えています。

そうした会社の現場にヒアリングしてみると

「実はこんなことを感じているのですがどうも目立つのがいやで…」

「問題だと思ってはいますが、誰か旗振りがいれば私も参加するんですけど…」「やりたいことはあるんですが、会社から無茶な要求ばかり来るのでやる余裕がないんです」等々

可能性の芽はあるのですが、どうも風土やマネジメントがその芽を摘んでいるように強く感じます。
現場の人たちは「やらなければ」という思いはあるのですが、結局行動には移っていないためにストレスが溜まり、自分をかばうために、出来ない理由を自分以外の上司や職場や会社のせいにして不満を言っている、というのがどうも実態の様です。 


◆自分を殺す凶器(言葉)

「どうせ私はこんなレベルです」

「どうせ俺には無理だ」

これらの言葉は、自分を殺す凶器です。

どんなに能力があっても、豊富な経験があっても、この言葉で自分が死んでしまいます。そして、出来ない理由を他人に向けて、自分は正しいのに、と正当化して、世の中との繋がりを遮断して行くのです。こうした否定的な思い込みで囲ってしまう意識の壁(メンタルブロック)、これが自分の可能性も人間関係もすべてを悪くしている原因であるといえます。

これは、上司やコンサルタントもどうすることもできません。唯一ともいえる方法は、このような思い込み、考えが自分自身をダメにしていることに気付き、小さなことでよいので、自ら考え、自ら行動することなのです。

挨拶や朝の散歩でもよいでしょう。ともかく自分で考え、まず行動してみる。そして習慣づける。こうすることで強固に築かれていた自分を囲っているメンタルブロックが崩れていき、前向きで主体的な自分が戻って来るのです。


◆主体的に考え、行動する風土

「こうしたらいいのに」「自分はこんなことがやってみたい」ということを本当に実行に移していける風土やマネジメントがあれば、人はイキイキと働くはずです。

「あれはやっちゃダメ!」「そんなことムリだろー」と、可能性を閉じ込めていませんか。

「それいいね! 難しいけどやってみようよ!!」「失敗してもいいよ。チャレンジしてみよう!」という風土・マネジメントが、今一番必要とされているのです。

「一日8時間労働制に感じた危機感は、労働時間の不足などではない。働くということが、ただの決まりきった作業になってしまうということだ」とは、エジソンの言葉だそうですが、このエジソンの危機感の様に、私たちは単に作業をする人を増やしてはいないでしょうか。例えば、政府が推進する「働き方改革」も、残業を減らそうとか育児休暇を取ろうとか、本質の部分が抜けているように思えてなりません。

本当に必要なのは、自分の成長や夢のために主体的に仕事に取り組むことです。ドラッカーが言う“ナレッジワーカー(知識労働者)”とは、「自ら考え、自ら決め、自ら行動する人」という意味です。これと対極にあるのが“マニュアルワーカー”、すなわち、指示、命令に従い、マニュアルどおり働く、動く人です。各人がいかにして自ら考え、自ら決め、自ら行動して自分の成長を果たしていくか、現代の労働者の大半を占めるナレッジワーカーの大きな課題です。
 

◆自らの意図を持って行うことで、人は幸福感を得る

幸せを感じるのは、およそ半分は遺伝的による、と言われています。

環境要因(人間関係、仕事、家庭、お金、健康)は10%。それは、人間は我々が想像以上に短期間に自分のまわりの環境変化に慣れてしまうからです。

残り40%は、日々の行動のちょっとした習慣や行動の選択の仕方による。特に、「自分から積極的に行動を起こしたかどうかが重要」なのだそうです。自らの意図を持って何かを行うことで、人は幸福感を得るのです。

そして幸福な人は、仕事のパフォーマンスが高く、クリエイティブで、収入レベルも高く、結婚の成功率も高く、友達に恵まれ、健康で寿命が長いことが確かめられているそうです。定量的には、幸せな人は、仕事の生産性が平均37%高く、クリエイティヴィティは300%も高いと言われています。

脳科学的にも、自分で考え自分で決めることで「報酬神経群」の働きで「心地よい」というご褒美が出るそうです。脳内物質のセロトニンやドーパミンがでることで心地よさを感じ、次なる行動へと駆り立てる仕組みなのです。

ですから、幸せになるためにはまず自分から積極的に行動を起こすことです。
私たちの幸せは、未来に向かって昨日より今日の自分を成長させるために、自分で考え判断し、自分の持つ個性と才能を発揮することです。

次回は「夢」について取り上げます。
 

文責:ジェムコ日本経営 ジェムコ日本経営 人材開発事業部 部長 鳥羽 昭仁


◆昨今の人材、組織活性化に関するお悩み

 人材開発事業に携わる中、日頃経営者、幹部、あるいは人事やHRの部門管理者の方から、人、組織に関わるお悩み、ご相談をいただいておりますが、昨今の企業環境を反映して実に多岐にわたります。例えば…


・技術・技能の伝承、中高年シニア社員の活用と活性化がうまくいかない

これは、団塊の世代の完全退職を迎える2025年問題や65歳定年延長(改正高年齢者雇用安定法)などが背景にあります。
 

・次世代幹部社員(リーダー)、グローバル・中核人材の育成不足

ご承知のようにグローバル経営が加速する環境下、例えば若手社員の内向き(安定)志向の増加、異文化コミュニケーション力の不足、変革推進リーダーの絶対的不足と育成の必要性、これらを踏まえた教育体系の見直しの必要性が背景です。

・多様性、一体性(D&I)への対応、女性社員活躍へのサポート体制の不備

例えば、女性社員の育児サポートや復職に向けた支援と効果的な制度・運用、管理職層のパラダイム・チェンジ、マタニティー・ハラスメントの社会問題化などが背景にあります。

・タレントマネジメント;人材と組織の見える化、仕組みづくりがわからない

人材管理データの蓄積・管理・分析と効果的な活用が求められています。
 

・評価・報酬体系の見直しをどうすべきか?

年功序列、終身雇用の職能資格制度がターニングポイントにあるのは周知の通りですが、最近は「ホワイトカラーエグゼプション法」(年収1075万円以上の高度専門職の勤務形態に対する、時間ではなく成果による賃金決め)の法改正検討なども背景にあります。

・就業形態の変化への対応をどうすれば…派遣(有期)社員や限定正社員の能力測定の基準や諸制度の再構築は…

例えば改正労働者派遣法を受けて、企業はどのように対応していけばよいかなどです。
 

◆「人材」・「組織」・「現場」の3つの開発

 こうした人に関わる悩み、組織の活性化への取り組みへの対応では、「働き方改革~人と組織を元気にする~」との全体観で、便宜上デフォルメして以下の3つの「開発」を基本コンセプトとして展開しています。

・「人材開発」

・「組織開発」

・「現場開発」
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①人材開発

ここでは人事やHR、そういう機能を持つ部門に対して主に教育研修等を提供しています。例えば、「内外のグローバル化対応」としてグローバルマインド醸成、リーダー育成、他階層別研修など。「働き方の多様化対応」としてダイバーシティ対応研修などがあります。 

②組織開発

これはもう少し上位というか大きなテーマです。人材開発の周りにあるような大くくりであり、経営トップ、経営企画、管理部門の管掌役員の方に対する提案になります。例えば、「組織風土」とか「企業文化」の問題や、人を活かすためのいろいろな仕組みづくり、また、どのように適材適所に人を配置するか、その前提としてどんな人材がどのように分布しているのかといったことの見える化、(いわゆるタレントディベロップメント)あるいは、それらに付随する評価・報酬・処遇をはじめとした制度・仕組みをどのように構築していくかなどです。

③現場開発

現場起点での人の活性化、モチベーションの向上、生産性の向上といった、工場長とか営業部門長など現場の第一線のトップの方のお悩みへの対応です。

例えば技能・技術伝承対応として実務ワークショップや伝承者育成、ナレッジエンジニアリング、あるいは実務とマインドの融合(マインドマネジメント)を実施しています。

◆「働き方改革」

 当社は現場での改善・改革指導で成果を出すことが元々強みですが、定着化、永続性のためには人材開発(継続的な人材の育成)、組織開発(風土改革、規範変革)、現場開発が連動して取り組まなければ達成できません。いま、経営者・幹部の方からは異口同音に

・“ことなかれ社員”が増えた。一人ひとりがもっと当事者意識を持って自ら考え、動ける。そんな社員を育成しなければ…。

・社員が活き活きと働ける。仕事を通じて向上しようという気持ちで、わくわく楽しく仕事ができ、生産性や品質も向上する。そんな職場にしたい…。

等々の話題が、投げかけられています。

次回は「働き方改革」の詳細についてご紹介したいと思います。

文責:ジェムコ日本経営 常務理事 グローバル事業担当コンサルタント 高橋 功吉

前回は、グローバル本社機能として整備すべき事項について述べた。その前の回でも述べたが、海外拠点の経営がうまくいくか否かは出向者に起因することがほとんどだ。それだけに、定期的な監査や、管理帳票の見直しで問題を早期に発見して対策が打てるようにすることは重要なことだが、やはり、そのような問題を起こさず、経営の舵取りをするためには、出向者人材を適切に育成することが基本と言える。併せて、海外拠点がどんどん拡大する中で、出向させられる人がいないと悩まれている企業も多い。そういう意味では、いかに短時間で出向者人材を育成するかも課題と言える。今回からは、出向者人材をいかに育成するかということについて述べる。
 

◆計画的な育成とは言うものの実質的には無理

 海外出向すると、担当する分野が極めて広くなると共に、役職も日本での役職から1~2階級上になることが大半だ。当然、専門分野だけを知っていれば良いということにはならない。そういう意味では、計画的な育成を図るには、色々な部門の経験を積むことが必要であり、そのような育成ができればそれに越したことは無い。実際、将来を担うであろう人材を明確にして、ローテーション計画を立てられている企業もある。しかし、この方法は、ものすごく時間もかかると共に、実現できていないのが実態だ。筆者のご支援先でも、出向候補者人材のリストがあり、その育成計画が記載された計画書はあっても、各部門のニーズや、その人が抜けると業務に支障をきたすという理由で、結局は異動できないままになっているということが大半である。計画的なローテーションは、大抵、絵に描いた餅になっていることが多いということだ。

また、それ以上に多いのは、海外での拠点新設が急に前倒しになったり、急に出てきたりしているケースだ。これは、客先の要請によるということもあるし、そこに事業機会があると判断すれば、逸早く進出した方が得策という経営判断が働く場合も多い。そうなると、計画的な出向者の育成どころではなく、今すぐ出向させられる人材は誰かという話しが突然出てくる。

すなわち、計画的な育成が図れるのであれば、それに越したことは無いのだが、実質的には無理というのが現実の姿ではないだろうかということだ。

◆出向候補者の選定・・・先ずは資質があるか否か

 それでは、どうするとよいだろうか。出向候補者の選定にあたって、よくあるのは、出向先での仕事ができる人(できそうな人)ということで選定するケースが多い。しかし、これだけで選ぶと失敗することがある。一番大切なことは、海外出向者に求められる資質を備えているかということだ。実は、国内で優秀だから、海外でもできるとはならないケースが多いからだ。筆者の経験した事例では、優秀な経理責任者にもかかわらず、海外での生活が不安で、うつ病になってしまい、赴任直前に取り止めることにしたという例もある。また、出向したものの、その国の文化や風土が受け入れられず、いつ帰任できるだろうかということばかり考えて、ほとんど仕事ができていないというケースもある。
 そういう意味では、日本と異なる文化を受け入れ、また、多少のことでは動じない強いメンタリティを持っているということが海外出向者に求められる必要条件と言える。特に、赴任先が、日本と比較すると劣悪な環境にあるというような場合は、なおさらである。従って、選定にあたっては、仕事の内容という前に、先ずはこのような資質を持っている人かどうかで選ぶ必要があるということだ。


◆短時間で育成を図るには・・・先ずは何を事前に勉強する必要があるかを明確に

 さて、資質があるという人の中で、出向先の地位や仕事内容を踏まえて、それに対応できる人を選定することになる。その場合、出向者の地位や仕事内容から、出向者に求められる要件を明確にしておくと良い。その中で必要となる知識について、出向候補者が修得していないものについては、事前にそれを修得する場を用意することが必要となる。一般的には、一つには、経営責任者や、経営幹部として出向するケースが多いので、経営の基本とマネージメント、また、海外では日本の常識は通用しないので、異文化への理解と対応等については、最低でも理解しておく必要がある。(これについての詳細は、次回以降、述べることにする。)

 もう一つは、その事業を進める上での専門知識だ。例えば、品質や生産技術といった、独自の規格や専門知識が必要という場合は、それらを修得しておく必要がある。これらは、大抵は、それを専門とする部門に行って、現物や帳票、マニュアル等を見ながら、ポイントを学ぶ必要がある。いずれにしても、出向者に求められる能力や知識要件が整理されていれば、何を事前に修得しておく必要があるかはわかり、それを短時間で研修できるようにするということだ。

◆相談できる関係を築く

 ところで、そうは言っても、少しくらい研修しても、専門知識については、すぐに自分のものにするというのは難しい。研修で大切なことは、出向して事業推進をする際に、必要となる知識の引き出しを用意しておくということだ。すなわち、すべての分野の専門家になる必要はなく、その分野については、誰に聞けばよいかがわかっていれば、仕事はできるということなのだ。そういう意味では、研修にあたっては、このことは、誰に聞くとよいかという相談役を明確にして、気軽に相談できるような関係を築けるように配慮することが大切ということだ。そういうことであれば、短時間で、必要となる知識の引き出しが準備でき、海外に出向しても、何とか仕事はできるということになる。

 次回からは、経営幹部として、出向する人には、是非、理解しておいていただきたい事項について述べることにする。

文責:ジェムコ日本経営 執行役員 ニュービジネス開発事業部 事業部長 財田 和典 


◆“神業”の存在

 今回は、“この分野では誰にも負けない”という高度な専門技術を有するシニアの技術者による技術コンサルティング。そんな“神業”の一端を、今回ご紹介します。(守秘義務の関係で詳細にお伝えできないのですが、なんとかイメージだけでもつかんでいただければと思います)
「技術の神様」のホームページは、コチラ


◆<例その1>鋳物の現場 「3分で状況を解明、課題を即解決!!」
 「ある部品を鋳物メーカーから供給してお客様に納品したら破損した。当社には鋳物に詳しい者はおらず対策に困っています。ジェムコさんには鋳物の専門家はおられませんか…?」
 

機械メーカーからこのようなご相談があり、早速、取引先の鋳物メーカーに “鋳物の神様”( 技術コンサルタント)と伺いました。鋳物の神様は、現場をサッと見て、ものの3分ぐらいで外に出てしまいました。私は、体調でも悪いのかな…と心配しました。ところが、技術の神様は、「もう分かったからいいんだ!」といいます。


実際、鋳造品の破損部を20倍の顕微鏡で観察したところ、微細な巣(鬆)が無数に入っていました。


「中子(ナカゴ 空洞部を作る型)に水溶剤を使用しているので、主型の型合わせの直前に、バーナーで主型の表面をよく焼いてアルコールを飛ばさないとダメですよ。」


また、他の鋳造品も見てもらったところ、


「全体的に湯を入れる口が小さすぎますよ。これでは製品の端っこでいろいろな不具合が起きますよ…」


それから、鋳物ですから非常に熱い。何度も火を止めたり、戻ったりで効率も悪い。炉からの出湯から型への注湯まで(炉⇒大取鍋⇒保持炉⇒子取鍋⇒型)へと湯が移る度に空気にさらされ、その度に湯の温度が下がってしまいます。

「だから元の温度は高くないとダメですよ」


等々、その場で不具合の原因を即座に見抜き、変えましょうと改善しました。先方もビックリされました。現場で3分で問題解決し、具体的な技術コンサルティングの導入へと相成りました。


◆<例その2>精密加工の現場「大学で教えない基礎も解説」
 ある精密加工現場での例です。機械加工の現場の方は「機械加工の基礎は分かっとるわい」と言われます。

それに対して技術コンサルタントは、図、資料などを見せて、例えば

『切削とは、削られる材料とそれより硬い材料のぶつかり合い、こすり合い』

と分かりやすく解説します。現場の方もこうした説明はこれまでに聴いたことはありませんでしたから、初めて分かってきます。

また、機械加工の位置づけと流れについては、図解を用いながら「『設計』⇒『製図』⇒『機械加工』⇒『組立』⇒『完成』という全体の流れを考えて仕事をするんですよ」と、これもわかりやすく解説します。現場の方はこういった形ではほとんど教わったことがありません。


また、

「よい切削性能を得るための要因」について、いわゆる「魚の骨図」(特性要因図)

などを既にコンサルタントが持っていますので、現場の方に時間をかけて考えさせるのではなく、実務に即した「切削の基礎」を分かりやすく教えます。


あるいは、固有技術のみならず、仕事の取り組み方など、大学でも教えない基礎をやさしく教示します。これらはほんの一例ですが、マネジメントコンサルタントとは異なる 技術コンサルタントの仕事のイメージはこのような現場密着型で進められます。


 確かに“神様”は高度な専門技術に詳しいコンサルタントですから、先ほどの鋳物の例のように、現場でどんどん具体的に問題を解決するのですが、その一方で、現場の方に対しては、神様オリジナルのテキストや図解資料などをきちんと提示しながら、ものづくりの原理原則ということを分かりやすく教えることも多くあります。


【本サービスに関するお問い合わせ】jemco-frontierアットjemco.co.jp (アットを@に変えてお送りください)

文責:ジェムコ日本経営 常務理事 グローバル事業担当コンサルタント 高橋 功吉

今まで、海外で発生する問題と対応について述べてきた。前回は、それらのまとめとして、本社機能の一つとして、監査と事前の出向者教育の重要性を述べたが、今回は、これらグローバル本社の機能として整備すべき事項について述べることにする。基本的に、グローバル本社機能としては、大きく、3つの機能が求められる。
 

◆1.管理・牽制機能

 一つは、管理・牽制機能である。これは、前回述べたことだが、海外拠点が日頃から管理すべき事項を、管理帳票として整備し、それを使って日頃からグローバルに管理推進する機能である。人災を防止すると共に、グローバルに計画に基づく経営推進を図るための基本として、これらの整備は重要だ。併せて、管理帳票と共に、事前の経営見通しを踏まえた先手の対策指導も行なえることが望ましい。グローバル各社が計画に基づく推進を図ることが連結での計画達成を図ることになるからだ。また、海外各社への投資が計画通りに回収できているかという投資回収管理も大切だ。課題会社がどこかを把握し適切な対応策を打ち出していくことが必要だが、これを把握するためのベースは、これらの管理ができていることが基本になる。また、前回述べた定期的な監査(経営監査や品質監査、環境監査等)で、帳票だけではわからない問題を、現場に出向いて確認することで事前に問題を発見し、早期に問題の芽を摘み取るようにすることも重要な機能である。


◆2.戦略機能

 二つ目の機能は、グローバル戦略機能である。常に経営環境は変化する。また、市場も変化する。課題拠点があるのに放置したままというのでは全社の足を引っ張ることになりかねない。また、グローバルに事業を拡大するためには、新たな市場獲得を目指した展開が必要不可欠である。新たな市場開拓、そのための供給拠点戦略、また、供給拠点の見直しや、既存拠点の統廃合を含めた再編等、常に時代変化を踏まえて的確な戦略を打ち出していくことが大切だ。そのためには、これらの戦略検討に必要な情報が整備されていることも重要だ。例えば、どの拠点で製造するといくらなのかといった原価情報一つがわからないのでは、供給拠点戦略を検討するのにも一苦労ということになる。これら常に戦略を見直し、また、検討していくための情報の整備も、適切な戦略を立案するためには大切ということだ。
 

◆3.サポート機能

 三つ目の機能は、グローバルサポート機能である。情報システムや法務、また、人事やものづくり等、各拠点へのサポート機能である。各拠点それぞれで、この機能を持つのは非効率であったり、難しいというものは、グローバル共通でのサポート機能があると有効だ。最近では、地域本社を設立する企業も増えてきたが、地域としての戦略の立案と共に、地域としてのサポート機能、財務センター機能等を地域本社に移管して、現地に即した迅速な意思決定や現地に即したサポート体制を築いていくということがその狙いである。実際、各国で法律も異なるし、また、労働環境も異なる中で人事制度や採用方法も変える必要がある。それぞれの地域で行なった方が有効ということが多いからだ。

◆内なる国際化の問題

 ところで、これらグローバル本社機能の整備と共に、やはり重要なことは、内なる国際化である。ある海外拠点K社社長の愚痴を紹介しよう。

「日本の各部署から、すべて日本語で、色々な資料を出せと私のところに送ってくる。現地語でとまでは言わないが、せめて書類は英語にしてくれれば、そのままローカルに渡せるが、すべて日本語では翻訳しなければならず、これらに対応していたのでは、まともに現地の経営もできない。しかも、送ってくる書類は、各事業部門別に、内容は同じようなものにもかかわらず、全部様式も違う。せめて、帳票はグローバル共通にして、ローカルメンバーがわかる様式にし、直接、日本の担当者はローカルメンバーとやりとりしてくれ。」

さて、皆さんの企業では、いかがであろうか。現地の出向者は単に日本との連絡窓口というようなことになっていないだろうか。グローバル化の加速には、経営の現地化の加速と共に、内なる国際化は必須条件となる。日本人が誰もいない海外拠点となれば、どうしないといけないかということだ。また、そのような状態で適切な経営推進を図るためには、グローバル本社としての管理・牽制機能等は必須ということになる。特に、海外拠点の増大に伴って、これらの体制構築が重要なタイミングになっている企業は多い。まだ、十分に整備ができていない企業は、意識してこれらの体制構築を推進されてはいかがだろうか。

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