【JEMCO通信】 ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部/広報室 編集

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2014年05月

文責:ジェムコ日本経営 常務執行役員 奥村英夫

前回は、「生産資源の“柔構造化”」を活用した4つの方法論のうちの2つめ、「生産資源の価値向上」について解説した。今回は、4つの方法論のうちの3つ目「生産資源の構造改革」について解説する。

<方法論―3>生産資源の構造改革
生産資源をコア業務へ集中することでコアの度合いの低い業務への人材投入が手薄となる。コアの度合いは低くとも企業の基本機能を果たす必要業務である限り、排除することはできない。そこで、コア業務への集中化をスムースに進めるため「生産資源の構造改革の戦略」が必要となる。生産資源の構造改革は「作業のコアの度合い」と「生産能力の負荷の度合い」で方向付け(下図)される。「生産能力の負荷の度合い」とは、生産資源のロスの大きさに他ならない。

コアの度合いの高い業務は原則社内である。能力に対する負荷が高ければ新たな技術・技能を持った人材育成、設備の改造、導入が必要となる。(図4-4のA ゾーン) 能力に対する負荷が低ければ、現状がアウトソーシングであれば社内へ取り入れることで生産資源のロスが減少し価値は高くなる。(B ゾーン)

 コアの度合いが低い業務は原則アウトソーシングを行う。それにより社内の能力がますます空いてしまう場合はその余力をコア業務に回し人材を補充することが可能である。これにより生産資源のロスはなくなる。(C ゾーンの余力をA ゾーンへ)
尚、コア業務を社内へ取り入れることにより作業コストが上昇する場合がある。しかし、だからと言ってコア業務の取り入れを止めるのではなく「効率的な作業」や「投資の軽減」を工夫することで、「収益の成長力の源泉」の確保を怠らず、「収益の定着化」に繋げていくべきである。
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●生産資源の構造改革の方向性

以上
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文責:ジェムコ日本経営 取締役 グローバル事業担当コンサルタント 高橋 功吉

 今回は、海外でよくある問題の中から、不正問題について述べることにする。

先ず、出向者が認識しておかなければならないことは、新興国であれば、必ずと言ってよいほど、不正はあるということだ。うちの会社ではそのような不正はないと言われる方もあるが、たいていの場合は、それがたまたま発覚していないからにすぎないと考えるべきだ。

 

◆不正も権利?

 新興国や発展途上国は、まだまだ、裕福とは言えない生活環境の人が多い。例えば、筆者がインドで経験した事例を紹介しておこう。20年近く前のことだが、当時は今のようなショッピングモール等はもちろんなく、裸足で歩いている人が大半だった。街の店舗を回っている時のことだ。小さい子供達が1ルピーでよいのでくれと足にしがみついて手を出してくる。かわいそうなので渡そうかどうしようかと迷っていた時、「渡したら最後、数えきれない人達に囲まれることになるよ」と言われ、仕方なく足を引きずって歩いたことを今でも鮮明に覚えている。このような生活環境で育った子供達が、今、働いているのである。ある意味、不正ができる機会があれば、それは一つの権利をえたのと同じと思ってもおかしくないということだ。

 不正についての感覚は、日本人はそのようなことは絶対に許せないことと考えるが、新興国や発展途上国では、それほど悪いことという意識は無く、不正も権利の一つという位の感覚だということだ。先ず、現地でオペレーションする出向者は、このあたりの感覚を理解しておくことが大切と言える。よくあるのは、信用していたローカルメンバーが不正をしていたことがわかり、それにより信用ができなくなり、それまで築いてきたローカルとの信頼関係が崩れるというケースは多い。さらに実際に不正を見つけ退職させたという例もあるが、そうなると経営そのものの推進に支障がでてくるケースもある。さらに、密告等があるケースもあり、そうなると、不信感ばかりが先になり、その確認や追及に明け暮れ、肝心の経営推進そのものが疎かになってしまうという例さえある。以前、この不正問題に頭を抱えられていた現地会社の社長に、「あなたがやろうとしていることは、まるで10億人の風土改革ですね。」と申し上げたことがある。先ずは、このようなことは当たり前と考え、目くじらを立てるのではなく、「幸い経営に大きな影響が出ていないのであれば、許されることではないが、まあいいか」位の気持ちを持っていないと精神的にも参ってしまうからだ。その上で、それを防ぐ策を検討し、着実に実行することが大切ということだ。


どんな不正があるか

 それでは、先ず、どんな不正が発生しているか、いくつか事例を確認しておきたい。

不正で多いのは、個人の裁量によって購入や支払いが決められたり、数量や単価の妥当性がチェックしにくいものだ。例えば、所要量が自動的に計算されない間接材料の取引は不正がしやすい。たまたま、ある支援先で、ものづくりのベースである5Sの指導をしていた時のことだ。手袋が各職場で保管されていたのであるが、各職場で保管する量も決められておらず、補充ルールも曖昧だった。実際に発注している部門では各職場での使用量をどのように管理しているのか、また、発注量はどうなっているかを確認していくと、それらの管理はされておらず、各職場責任者の言う数量からすると、どうみても実際の使用量の倍以上が発注されていることが判明した。各職場で交換の基準もなく、好きなだけ持って行って保管しているという状況だったので、実際に全社で注文している量は適切かどうかもわからない中で、発注担当者は必要量の倍の注文をして半分を懐に入れていたのである。

 また、こんな例もある。経営診断をした時のことだ。ちょうど、診断前のタイミングで、レイアウト変更に伴う工事が行われたところだった。明細を持って現場確認をしてみると、新品の扉に取り換えたことになっていたのだが、現物は従来の扉に色を塗っただけで新品に取り換えされていないことが判明した。当然、その会社の出向責任者は工事終了後に確認をしているが、そんな細かいことまでは確認しておらず、工事業者と工事を依頼した窓口である生産技術責任者との間で金銭のやりとりが発生していたということだ。当然、工事費そのものも水増しされていたのだが、出向者は相場もわからず、ローカルの生産技術の責任者任せで誰も不正に気付けない状況だったのである。

 そして、販売関係の例としては、販売促進費や特別値引きなど商談によって決めるお金での不正例である。担当の営業マンが販売先と結託して、販売促進費や特別値引き助成金等を積み増す商談をし、それを得意先が請求してきて、山分けにしていたという例だ。これは、取り扱う商品や流通形態等によるが、競争が厳しい場合、販売助成金等を出さないと売れないというケースもあるが、担当の営業マンの裁量で勝手にこのようなことが決められると、納入先から請求書が来てからでは対応しようがなくなってしまうということだ。

以上、金銭取引に関係した不正の例を見てきたが、このような金銭取引だけではなく、盗難等を含めて、海外の場合は、色々な問題が発生する。

 次回は、これらの具体的な対策方法について述べることにする。

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