【JEMCO通信】 ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部/広報室 編集

成長戦略 | 技術伝承 | グローバル | 改善改革 | コストダウン | 等 プロジェクト現場から最新情報やお役立ち情報をお届けします。

2016年03月

文責:ジェムコ日本経営 常務理事 グローバル事業担当コンサルタント 高橋 功吉

  前前回は、海外拠点の経営幹部として、赴任前に最低限、身に付けておくべき事項の一つ目として、経営の基本についての理解の重要性を述べた。

今回は、各国で仕事をさせていただくという立場から、各国の事情や文化・宗教等についての事前の理解の大切さについて述べたい。


◆その国の常識を知らないと大変な事態になることは多い

 以前、このコラムの中の「人の現地化」の中で、タイのある拠点で発生した事例を紹介した。それは、日本人出向者が、人事異動に関する説明をするのに、王様を引用して説明したのだが、説明の仕方の悪さもあり、これが不敬発言だとして、従業員から残業拒否、さらには、ストライキに入るという事態にまで発展。事業継続のために、最終、その出向者を帰任させることで収拾せざるをえなくなったという事例だ。タイでは国民の誰もが王様を尊敬している。その当たり前の感覚が不足していると、このような大変な事態を招いてしまうということだ。

また、インドをはじめとした新興国では、売掛金回収問題で苦労された企業も多い。販売したら支払ってくれるというのは日本の常識だが、国によっては、いかに支払いを先延ばしするか、支払わずにすませるかを考えるのが当たり前という国もある。その常識がわかっていないと、売掛金の回収ができず、資金繰りが回らないという事態に追い込まれてしまうということも発生する。

それぞれの国には、それぞれの文化や歴史があり、また、宗教も違う。日本では、無宗教の人も多く、宗教を軽んじる人も多いが、それぞれの国で根付いた宗教を理解せずに、それを無視した言動をすると事業ができなくなるという事態に陥ることは多い。

 その国で生活する上でも日本の常識は通用しないことが多い。チップを支払う習慣の無い日本人は、その国の人からは非常識な人とみられる。また、生活する上で、日本は拳銃の所持そのものが禁止されているが、自分の安全を守るという視点では拳銃を持つのは当たり前という国もある。また、食事をすれば目上の人が支払うのが当たり前で、割り勘というようなことを言いだすと驚かれるケースもある。宗教で禁止されている食べ物や期間があったりもする。飲酒もそうだ。それぞれの国でものの考え方も違うということであり、その国で暮らすには、その国の常識を理解して生活することが必要だ。

ところで、ここまで、各国で文化や宗教が異なるにもかかわらず、事前にこれらの教育がされていないというケースが意外に多い。仕事の引き継ぎは行なわれるが、このような、その国ならではの注意すべき事情が引き継がれていないことも多い。

 そういう意味では、出向者人材の育成には、赴任候補先が決まったら、その国の文化や習慣、宗教をはじめとした、その国の常識を勉強できる機会を作ることが大切だ。これらの勉強方法だが、一つには、日本在外企業協会はじめ、各国の事情や、問題発生事例等を記載した本や資料も多く出されているので、これらを活用して勉強すると共に、可能であれば、日本の文化や考え方をよく知っている外国人の方に、その国で日本人が注意すべき点を教えてもらう場を作ることは有効だ。ある企業では、日系企業での勤務経験のある留学生に来てもらい、赴任国の文化や考え方、また、日本人の考え方との相違点を説明してもらい、日本人が注意すべき点を赴任前研修の中で行なわれている。実際、受講者からは多くの質問が出されるが、事前に、このような事情が理解できるだけで、赴任してから、ローカルの皆さんとの接し方や信頼関係の構築に、大きな効果があると共に、赴任にあたっての不安解消にも役立っている。もっとも、赴任先が多くの国にわたると、そのような場を設けることが難しいというケースもあるが、実は、留学生のネットワーク等を活用することで、結構、多くの国の方にお国事情を聞く機会を作ることは可能である。

 また、生活という視点では、以前、その国に赴任した経験のある家族から生活上注意すべき点を聞くというのも有効だ。仕事の話しだけではなく、生活上の情報も入手することで、赴任者は安心して赴任することができ、事前の心構えもできることになる。また、それらの情報をまとめるだけで、その国で生活する上で注意すべきことや、日本から持参する方がよいもの等をまとめた情報ブックが作成できる。各企業では、これらの情報を集めて一元的に管理することは大変有効なことだ。家族帯同で赴任する場合には、これらの情報を家族にも伝えることで家族の不安を少しでも取り除くことができる。

 グローバル化が加速する中で、これらの情報を積み上げていくだけでも貴重なノウハウにすることができるということだ。


◆その国で仕事をさせていただくという姿勢が大切

 ところで、筆者が海外出向される方を対象とした研修でいつも申し上げていることであるが、一番大切なことは、「その国で仕事をさせていただく」という姿勢を忘れないということだ。実は、海外拠点を訪問させていただくと、ローカルの皆さんをバカにしたような発言をされる方がある。「彼らでは、言ってもわかるはずはない」というような発言だ。その国で拠点を設立して仕事をさせていただく以上、ローカルの皆さんの力がなければ事業は成り立たない。また、その国で事業をさせていただく以上、何かしら、その国に貢献できないようでは、進出する価値はない。その国で、その場所を借りて、また、その国の方々の力を借りて事業をさせていただいているということであり、その基本姿勢を忘れては具合が悪いということだ。

その国を愛し、発展に向けてどうお役立ちできるかを考えることが、その国に受け入れてもらうことができる基本である。常に、この姿勢を忘れなければ、わからないことはローカルメンバーに教えてもらうという姿勢ができ、色々と教えてもらうことで信頼関係と共に、その国の常識を踏まえた行動もできることになる。

現地に赴任すると、どうしても日本人は上位の職につく場合が大半だ。しかし、現地で仕事をさせていただく以上、常に、ローカルの方に教えてもらうという姿勢を忘れてはならないということだ。この姿勢を持ち続ける限り、大きな問題に陥るということは避けられる可能性が高い。出向いただく方には、是非、この姿勢だけは徹底していただきたい。


 日本の市場がシュリンクする中で、グローバル事業の拡大が成長戦略の鍵を握る以上、それを成功に導く鍵は、出向者人材の育成にかかっている。海外展開の計画の裏側には、出向者人材の育成計画が表裏一体として計画されていなければならないということだ。グローバルで事業を成功させるために、各社が適切な出向者人材の育成に取り組まれることを期待したい。

 ちなみに、ジェムコ日本経営では、海外出向される方々を対象とした教育支援も多く実施させていただいていることを申し添えておく。


2013年8月から、この「グローバル展開の現場から」のコラムを担当させていただきましたが、このコラムの執筆を担当させていただくのは、今回を最後とさせていただきます。長期間に渡ってご愛読いただきましたことに感謝申し上げます。グローバル展開無くして事業の発展はできない環境です。皆様のさらなるグローバルでのご発展とご活躍を心よりお祈りしています。

高橋功吉


文責:ジェムコ日本経営 ジェムコ日本経営 取締役 小倉明男
今回は「働き方改革」の本質の3つめのテーマ「関係性の向上:思い込みの罠」ということについて取り上げてみます。
 

◆妙齢のご婦人達の会話から

よく電車内やファミレスなどで出くわすオバさん3~4人の会話です。

「ねえ、聞いてよ~。A子さんたら昨日B子さんにこんなこと言っていたのよ」

「私も聞いたわ、信じられないわよね~」

「私なんかA子さんにこんなこと言われたのよ~」

「え~!ひどいわね…」

というものです。

話を聞いていると、A子さんはとんでもない人のようにも思えてくるのですが、だとすると、会話の当事者3~4人と、1人のとんでもない人がいる構図になります。

果たして本当にそうなのでしょうか。もしそこにA子さんがいたら、何と弁明するでしょうか。

人は、本当はこうしたいと思う理想の姿があるのですが、自分の努力不足や怠惰が原因でそれがやれなかった(やらなかった)時、自分を正当化するために、他のことの理由や他の人のせいにする傾向が強いらしいです。

先程の女性たちの会話から想像すると、たとえA子さんは正論を話していたとしても、何らかの理由でそれができない女性たちが、A子さんの性格や言動のせいにして、なおかつ同調者(A子さんは悪者)を増やしている、というそんなシーンなのかもしれません。 
 

◆事実と真実

世の中には事実は一つしかありませんが、真実(事実を受け止める人の価値観と感情を含めたもの)は人の数だけあります。

争いは真実と真実のぶつかりあいです。どちらも自分側の立場では「絶対正しい」のです。世の中の争い事はすべてこれだと言ってもよいでしょう。

それを「お前は間違っている」「あなたこそ違う」と言い合えば言い合うほど、感情的になり、「あいつはダメ」「あの人はひどい人」などのレッテルを張って、もう話を聞こうともしなくなります。つまりこれは“思い込み”です。
 

◆自分の世界を狭める“思い込み”

こうして人は“思い込み”の世界で自分の世界を狭めていき、「俺はツイテいない」「環境が悪かった」「上司・会社・友達に恵まれなかった」などと、自分のことはさておき、外部環境のせい、悪さにしてしまいがちです。こういう人は仕事のパフォーマンスも上がりません。
 

◆何を言っているかより、何をやっている人かが大切

仕事ができる人を見ていると、コミュニケーションがよく、不平不満は言わず、人の悪口は言わない、約束を守る、嘘はつかない、進んで嫌な役回りをするなどの共通点がみられます。そうでない人と何が違うのでしょうか。

仕事ができる人は、他の人や全体の状況を偏ることなくはっきりと見ています。他の人をあるがままに、自分と同じ人間、同じ様なニーズや望みを持った人として、まっすぐに見ています。何よりも、自分でこうしたことを実践していることが大切です。

 その人が何を言っているかではなく、何をしている人かが大切なのです。こういう人のところには、一緒に働きたいと人が集まり、おのずとうまくことが運びます。


◆かけがえのない仲間の長所を見る

このように、自分の価値観で人を見るのではなく、かけがえのない一人の人間として見れば、必ず長所や個性に気付けるはずです。

ある大手印刷会社で、営業部門のミーティング研修を実施した時の最終報告会で、各メンバーからの感想発表を聞いたのですが、同じ営業部門の部長と新人のコメントが次の様なものでした。

部長「ミーティング研修前は、A君のことを全くやる気のないチャラチャラしたダメ人間だと思っていました。今回のミーティングを通して彼と話をして、こんなに優秀でポジティブな人間がうちの部にいたと初めて気がつきました」(実際の言い回しはもう少し配慮されていますが、このような意味合いでした)


A君「ミーティング研修前はいつも怒られていてばかりで、部長の話がさっぱり分からずどうしていいか悩んでいましたが、このミーティング研修を通して、部長が言われていることの意味や、私に期待されていることがはっきりとわかりました」と。


研修により人の見かたや価値観が非常に劇的に変わった事例ですが、皆さんの身の回りにもあることではないでしょうか。つまらない“思い込み”でかけがえのない仲間を「ダメなヤツ」「つまらないヤツ」と決めつけていませんか。


◆組織における信頼関係が業績を上げる

とはいえ“思い込み”に気付くことは至難の業です。それは、自分の思考の枠組みであり、そこを自ら越えたり壊したりできないのです。例えば居心地のよい自分の部屋の壁を壊したり、屋根を取っ払う様なことであり、自らやることは簡単なことではありません。ではどうすればよいのでしょうか。

まずは、異質なものを受け入れてみることからではないでしょうか。世の中では「ダイバシティー」と騒がれていますが、これは何も外国人や女性を受け入れようということだけではなく「多様性の受容」ということです。異質なものを取り入れて組織生産性を高めようというものです。まずは先入観なしでいろいろな人の話を聞いてみませんか。


仕事を効率的に進めるためには「組織における信頼関係」といったインフラが不可欠です。お互いがそれぞれの価値観を知り、信頼し合っていることで良い連携がうまれ、お互いのミスを補い合い、そこにそれぞれの経験とスキルも加わって、成功の度合いを大きくすることができます。

企業業績を上げるために経営戦略や組織改革が論議されがちですが、本質的な部分としては、この信頼関係が構築されているかどうかが大切な部分だと思います。人間同士の関係性が深まることで連携が深まり、発想が広がり、モチベーションが高くなります。当然モチベーションの高い連携の取れた組織は、結果として業績が良くなるはずです。


今回のコラム「働き方改革」をシリーズ通して読んでいただけると
1.夢を持った集団が 2.主体的に 3.仲間とスクラムを組みながら働いて強い集団になります
ということになります。

次回は「思考の変化」というテーマです。

 

このページのトップヘ