【JEMCO通信】 ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部/広報室 編集

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2016年07月

文責:ジェムコ日本経営 常務取締役 コンサルタント 北井好


 日本の製造業の現場では過去から培われた技術が伝承されないまま空洞化する危険性が散見され始めています。この問題に対してどう取り組んでいけばよいか、第2回目に入ります。

第1回目で技術伝承にブレーキをかける三つの壁についてお話ししました。

 一つ目は「どう技術を正確に引き出すか」の壁、二つ目は「どう技術を正確に表現するか」の壁、三つ目は「どう技術を正確に伝えるか」の壁でした。これらは組織の変更やシステムの構築を検討することで克服されるものではなく、言いかえれば必要条件ではあっても十分条件ではないといえます。基本は、技術をまとめ上げるべく専任された人がこれらの能力を身につける必要があります。そして、これらの能力を誰もが身につけられるようにするには、この能力を理論化・普遍化し管理技術として理解し、訓練により体得する必要があります。

 さて、これからこれら三つの技術についてお話します。


 1.「技術を正確に引き出す」技術
 この技術のポイントは、根拠を徹底的に明らかにしていくこととその根拠が科学的裏付けのある理にかなったものであるかを見抜くこと、であるといえます。モノづくりの現場では、何かの行為や作用を与えることによりモノが変化します。与える行為や作用の目的とその条件の根拠、そしてそれがモノの変化の原理とどう関連するのか、曖昧な部分を残さず徹底して明らかにしていくことが必要になります。中には行為・作用とモノの変化の原理が明確に関連付けられないものも出てきますが、それらは、経験としての知見として別整理しておきます。


 2.「技術を正確に表現する」技術
 この技術のポイントは目的的表現・能動的表現を取ることであります。

 VE( Value Engineering : 価値工学 )の機能的考え方をベースとし、「○○を△△する」という表現を基本として簡潔にまとめていきます。受動的表現・情緒的表現・冗長表現は避け、形容詞は数値化をしていきます。そしてまた、その行為・作用の目的は何か働きは何か、の確認を行い上位・下位の関連の適合性をチェックすることにより、表現として適切な言葉を用いているか評価します。

 3.「技術を正確に伝える」技術
 この技術のポイントは技術として確立されたものとそうではない経験上の知見レベルのものは明確に分けて伝えること、そして伝える媒体と形式をどうするか、にあります。経験上の知見レベルのものを技術として認識し伝承していくのでは、進化は生まれません。地道な理論解明の姿勢が重要であり、そのためには技術と経験上の知見は峻別して伝える必要があります。また、文章よりは写真、写真よりは映像、と盛り込める情報量は多くなります。また行為と作用では表現すべき情報の種類が異なります。対象に応じて媒体と形式を選択する必要があります。


次回は技術をまとめ上げるべく専任された人、すなわち「テクニカルナレッジエンジニア」についてお話します。


文責:ジェムコ日本経営 取締役 小倉明男
今回は「働き方改革」の本質の五回目として「行動の変化:自分で考え、自分で決めて行動する」ということについて取り上げます。
 

◆頭は臆病

 営業で新規のアポイントを取る時、あれこれ考えると電話ができなくなります。相手は忙しいのではないか、怖い人だったらどうしよう、上手く説明できるかな…、考えれば考えるほど、悪い方のイメージが湧いてしまいます。頭の中を真っ白にして電話番号を押してしまえば、「お会いしましょう」なんて簡単にアポイントが取れるケースがあります。

 「頭は臆病だけど、手は臆病じゃない」。頭で考えていると、どうしてもできない理由をいろいろと考えてしまい、どうしてもマイナスな方向へいってしまう。でも実際に手を動かしてみると、意外と簡単にできることが多い。まず手を動かして考えていることができるということを、体を通して知ることが大事なのです。


◆自分で決める

 ある会社で営業成績の悪い人たちを対象に研修をしたことがありました。

話を聞いてみると皆「この地域ではむずかしい」「体調がすぐれなくて」「仲間の協力が得られなくて」など、できない理由ばかりでした。

 自分の可能性をなくしているのは「おれはこんなもの」「これでいいや」「これ以上は無理」というマイナスな自分自身の考え方です。それを破るのは自分で考えて自分で決めて行動するしかない。但し、最初から難しいことをやるよりスモールステップでやれることから取り組むことが大切だということを、研修を通して知って頂きました。

 メンバーが主体的に始めたことは「水曜日の午前中だけある地域を回わってみます」「くすりをちゃんと飲んでみます」「積極的にこちらから仲間に挨拶します」というものでした。ごく簡単な行動でしたが、手ごたえはあったらしく「よい話がありました」「体調がよくなりました」「職場の人が協力してくれます」と、まずみんなの表情が明らかに変わってきたのです。結果は、半年後このメンバーの方々はトップ近くまで成績が上がったのです。
 

◆脳内物質とマネジメント

 上記の例の様に、主体的に行動すると脳にある「報酬神経群」の働きでセロトニンやドーパミンという物質が出て、心地よいご褒美を感じ、次へのチャレンジに本人を駆り立てるのです。スモールステップで最初はどうでもいいようなことですが、主体的に行動して上手く行くことが、心地よさとなって次の行動へと導いていくのです。

特に、若い人たちは“指示待ち”だったり“事なかれ主義”だったりで主体的に行動できないことが多いようです。上司は安易に指示を出したり、自分の価値観や経験を押し付けるのではなく、失敗をしてもよいくらいの気持ちで、自分で考えて自分で決めて行動させるように仕向けることが重要です。そして上手くいったら褒めてあげる。そして、主体的に行動することが習慣化されることで、本人も成長する喜びを感じてチャレンジするようになります。


◆夢に向かって行動を起こす

 行動を起こすのには、夢や志が必要です。そのために、未来を考えることが大切となります。5年後、10年後、20年後、世の中はどう変わっていくのか。その未来で自分は何をしていたいのか。何ができる人間になっていたいのか。このイメージが湧いて、自分の“やりたいこと”が見つかれば、それが行動の大きな原動力となります。

 未来を夢を持って見ながら、その未来に自分がどんな形で携わっていたいかを考え、そのために今から何ができるのか、どんな努力をしていかなければいけないかを考えた上で、スモールステップで行動することが大切です。


これで「働き方改革」本質の五回目ですが、5回を通して読んでいただけると「①夢を持った集団が②主体的に③仲間とスクラムを組みながら④思考を変えて⑤自分で考えて、自分で決めて行動する強い集団になります」ということになります。

次回は本質の六回目「行動の習慣化」というテーマです。

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