【JEMCO通信】 ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部/広報室 編集

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カテゴリ: 7.隣の工場

文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 古谷 賢一

 コンサルティングを行っていると、改善活動に消極的な人が必ずいるものです。
消極的であればまだマシな方で、積極的に否定をする人もいるのが現実です。
しかし、あるタイミングをきっかけにガラっと考えが変わり、改善活動に積極的な姿勢へ転じることもあります。そういう瞬間に出会えることは、コンサルタント冥利に尽きる思いです。

 ある会社での印象的な出来事を紹介しましょう。
 規模の大きな化学メーカー
で現場の5S活動を行った時の事例です。業界でもトップクラスの生産を誇る工場でしたが、それに満足することなく、さらなる競争力の強化を目指して、ものづくり力の基礎体力を徹底して強化するべく5S活動に取り組んだものでした。しかし、足もとの職場を見ると、紙袋に入った粉体や、ドラム缶に入った液体などを多用するために、特に設備の周辺は、垂れた液まみれ、舞い散った粉まみれのひどい状態でした。長年そのような職場であったので、工場で働く多くの人たちにとって、それは”普通の姿”でしたので、誰も問題とは思わない状態でしたが、コンサルタントが指摘を繰り返すことで「これではまずい」という意識が芽生え、活動が進むにつれて現場が徐々に綺麗な職場へと変わってゆきました。

 しかし1箇所だけ、改善に後ろ向きの職場があったのです。設備の至る所から、水や蒸気、そして処理中の液体が漏れている職場だったので、コンサルタントは「まず、この設備を綺麗にしませんか?」と提案したのです。しかし、その返答は「綺麗にしても、どうせすぐ汚れる」、あるいは「設備のあちらこちらが老朽化しているが、修理の予算も無く、このままでしかたがない」と言ったもので、なかなか動いてはくれませんでした。

 そうしているうちに他の職場は、どんどん活動が進み、見違えるように綺麗になり、同時に生産性や品質にも改善の兆しが見えてくるので、問題の職場だけが取り残されるような状態になってしまいました。ところが、周囲の変化に危機感を覚えたのでしょうか、ある時、操業が無いタイミングを活用して、その職場のメンバーが自主的に、とにかく設備をピカピカにしようと立ちあがったのです。そのあと少ししてからコンサルタントが訪問をした時、その職場のリーダーがやってきて、「設備とその周辺を綺麗にしてみました、すると、どこから液が漏れているかはっきり分かりました」、そして「一番漏れが激しい箇所も分かったので、今期、その箇所だけは修理をしてもらえるようになりました」と喜んで報告をしてくれたのです。

 コンサルタントが、設備を綺麗にしたらと提案した理由は、ただ綺麗にするのではなく、綺麗にする事で、汚れや漏れなどの異常個所が分かりやすくなり、それによって設備保全にむけた行動を促したいと考えたのです。汚れまみれの設備では異常が見えにくいために改善活動の手が動かないのです。この職場では、コンサルタントが狙っていたことを、彼らが自ら行動したことで気付いて頂いたのでした。その後、その職場の設備が再び汚くなることはありませんでした。

文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 古谷 賢一

コンサルティングを行っていると、大企業であれ中堅企業であれ、とても悩ましい状況に陥ることがあります。このコラムでは、“隣の工場”で身近に起こった事例をモデルにして、どのように事態を打開していったのかを紹介したいと思います。

 例えば、改善活動を推進しようとしても、現場があまり乗り気にならず、改善活動への逆風が吹き荒れることがあります。「忙しいのに、改善活動をすると、さらに忙しくなる」、あるいは「改善活動って、しょせんは会社が儲かる話で、俺たちには何の得にもならない」、さらには「改善活動って、人減らしでしょう? 自分が不要になるようなことを誰が喜んでやりますか?」と言った言葉は、決して珍しいものではありません。

 ここで紹介するX社も、そのような声が渦巻く悩ましい職場でした。X社は金属加工を生業としており、全国規模の大企業ではありませんが、その地域では中核的な存在の会社でした。しかし、職人気質の従業員が多く、自分達の作業が一番だという自負もあり、改善や改革と言う言葉にはずいぶん抵抗がある職場風土でした。

 同業者が競争に切磋琢磨しながらレベルアップをしているなかで、市場の厳しさを肌で感じていた社長が、工場の改善取り組みの必要性を訴えるものの、現場の反応はまさに上記のような言葉が返ってくるばかりでした。改善を得意とするコンサルタントが、社長の助っ人役を仰せつかり、最初に工場を訪問した時も同じで、社長が席を外した途端、社長批判が続出して話しあいには程遠いものでした。

 しかしコンサルタントが根気よく、現場の人たちの話を聞いていると、今まで改善活動というと“おしつけの活動”ばかりであり、“自分達が苦労する事はあっても、改善で楽になることはなかった”という本音が見えてきたのです。そこで、コンサルタントは社長と密な話し合いを持ち、従来の改善での良くない記憶を払拭させて、前向きな職場を目指すことが重要だとの合意を得たうえで、現場に対して「改善活動とは、そもそも、作業する人が楽になることだ」と言うメッセージを発信しました。作業が楽になれば、結果として作業性も高くなるからです。

 “面倒な仕事は減らしましょう”、“身体に負担のかかる作業は減らしましょう”、“複雑な動作を簡単な動作に変えましょう”、そういうスローガンを掲げて、現場の人たちに実例を繰り返し体験してもらうことで、頑なだった現場の意識が変わり始め、その後、改善活動に弾みがつくようになりました。改善への道のりには時間がかかりましたが、それまで短期成果を追い求めるあまり、現場の意欲を大きく削ぎ落していたことが、この会社の反省点であったのです。

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